コラム

Columns

2022/12/07

これだけは押さえておきたい!「薬機法の広告規制」のポイントと対策

薬機法の広告規制

医薬品や化粧品を扱う事業者が必ず押さえておきたいのが「薬機法(旧・薬事法)」だ。
2021年8月から新たに「課徴金制度」が導入されるなど、その法規制は年々強化されている。
今回は、ヘルスケアマーケティングに欠かせない薬機法と広告の関係について簡単に紹介していきたい。

■薬機法とは?

医薬品や化粧品、健康食品等の販売や広告、マーケティングに携わったことがある人なら、一度は「薬機法」あるいは「薬事法」という言葉を耳にしたことがあるだろう。
以前は「薬事法」という法律であったが、2014年の法改正に伴い名称も「薬機法」に変更された。

薬機法とは、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品についての品質や有効性、安全性を確保するとともに、製造・表示・販売・流通・広告等を規制することでその適正化を図ることを目的としている。

つまり、

医薬品
医薬部外品
化粧品
医療機器
再生医療等製品

を扱う事業者は、この薬機法で定められたルールに従う必要があるのだ。

なお、健康食品やサプリメント、健康・美容器具などは上記に該当しないため、直接的な薬機法の制限は受けない。
しかし、健康食品であるにもかかわらず「毎日飲むだけで糖尿病が治る!」といった医薬品的な効果効能を標榜した場合、「未承認医薬品」という扱いで薬機法違反となる。
そのため、健康食品やサプリメント、健康・美容器具等を取り扱う事業者も、薬機法に抵触しないよう配慮しながら広告を作成する必要があるのだ。

薬機法における「広告」の定義

薬機法における「広告」は、以下のように定義されている。

1.顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
2.特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
3.一般人が認知できる状態であること

引用:薬事法における医薬品等の広告の該当性について

上記3つの要件をすべて満たすと、薬機法の「広告」に該当するものと判断される。

また、厚生労働省が各地方自治体に通知している「医薬品等適正広告基準」では、薬機法の対象となる広告を以下のように指定している。

第2(対象となる広告) この基準は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・ ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告を対象とする。

引用:厚生労働省「医薬品等適正広告基準

これらの媒体で医薬品や化粧品、健康食品等を広告する場合は、薬機法のルールに則した表現を用いる必要がある。

薬機法と広告規制

医薬品や医薬部外品、化粧品等を広告する上での規制は、主に薬機法第66条~第68条で定められている。

その中でも大きなポイントは以下の2つ。

・虚偽・誇大広告の禁止(第66条)
・未承認医薬品等の広告の禁止(第68条)

それぞれ詳しくみていきたい。

虚偽・誇大広告の禁止

薬機法第66条では、医薬品や化粧品といった薬機法対象製品の効能・効果等について、虚偽・誇大な表現や医師が保証したと誤解されるような表現を行うことを禁止している。

(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

実際にどのようなものが誇大広告にあたるかは、厚生労働省から通知されている「医薬品等適正広告基準」や行政指導例等によって判断される。

ここで注目したいのが、規定の対象が「何人も」となっていること。
つまり、広告主だけでなく、広告代理店や制作会社、さらにアフィリエイターやインフルエンサーなどの個人も規制対象となる。

また、従来は薬機法第66条の広告規制に違反しても逮捕されない限り罰金の対象にはならなかったが、2021年8月に改正薬機法が施行され、新たに「課徴金制度」が導入された。
これは、医薬品や医薬部外品、化粧品などについて虚偽や誇大広告を行った企業に対し、違反対象商品の売上額の4.5%を課徴金として徴収するというもの。
この改正により、刑事事件にならずとも行政の裁量のみで違反事業者に罰金を科すことができるようになった。
つまり、これまで最高で200万円だった虚偽・誇大広告に対する罰金額の上限が、実質的に撤廃される形になったのだ。
この課徴金は誇大表現によって利益を得た事業者への制裁措置ともいえるため、違反事業者にとっては大打撃となるだろう。

未承認医薬品等の広告の禁止

薬機法第68条では、健康食品やサプリメント、健康・美容器具などの薬機法非対象製品について、医薬品や医療機器と誤解されるような表現を行うことを禁止している。

(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

ここでの規制対象も「何人も」となっており、違反すると2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられることに。

実際、2020年に健康食品を扱う会社が「ズタボロになった肝臓が半年で復活」といった医薬品的な効能効果を謳う記事型のインターネット広告を掲載し、大阪府警に摘発された。
この際、広告主だけでなく、掲載に携わった広告代理店も薬機法違反の容疑で逮捕されたことは、業界に大きな衝撃を与えたという。
まさに「何人も」というルールが形だけではないことを世に知らしめる事件となったのだ。

具体的にどのような表現が違反とみなされるかはまた別の回で詳しく紹介するが、サプリメントの場合、成分・形状・用法用量・効果効能の4つの要素から判断される。

例:
成分
医薬品等に使用されるような体への効果が強い成分を含有することはできない。
形状
アンプルや舌下錠等の形状は医薬品とみなされる。
用法用量
「夜寝る前に」「1日3錠」など、飲む時間や量を指定すると医薬品とみなされる。
効果効能
「肌を白くする」「花粉症が治る」など、身体の変化や病気の改善等を述べるのはNG。

特に最後の「効果効能」についてはどこまで言えるかの線引きが難しく、広告担当者の頭を悩ませるポイントになっている。

薬機法に違反しないためのポイント

薬機法の広告規制や取り締まりは年々強まっており、もはや「知らなかった」では済まされないところまできている。
法令を遵守した広告を展開していくためには、企業側の努力が必要不可欠だ。

まずは、厚生労働省が定めている「医薬品等適正広告基準」や、日本化粧品工業連合会による「化粧品等の適正広告ガイドライン」等の内容をしっかり確認。
その上で、自社が提供する商品やサービスにあわせた広告ガイドラインを作成し、関係者間で共有していくのがよいだろう。

もし、
「自社商品の強みをどこまで謳っていいのかわからない」
「この表現、薬機法的に問題ないだろうか?」
と悩む場合は、専門家に相談するのもおすすめだ。

まとめ

薬機法の広告規制に違反した場合は行政指導が行われるほか、悪質な場合は逮捕となり、刑事罰として懲役刑または罰金、あるいはその両方が科されることも。
また、上述のとおり2021年8月からは課徴金制度も導入されており、違反した場合の経済的ダメージは大きい。
行政罰・刑事罰以外にも、会社のイメージや社会的信用を著しく損なうおそれもある。

薬機法の規制は常に変転しており、「気がついたらルールが変わっていた」ということも少なくない。
広告主はもちろん、広告代理店や制作会社といった関連企業も常にアンテナを張り、時代に合った適切な広告表現を模索・追求していくことが欠かせないだろう。

“高くて面倒” を 
“ちょうど良い”薬機法対策へ。

まずはお気軽にご相談ください。